03:「支援だからこそ」こだわりたかった味への想い

味にこだわったアニダソチョコ

世界の「児童労働」の撤廃と予防に取り組む国際協力NGO、ACEの25年の活動を記念して作られた「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレート。ACEの活動地域のカカオ豆を使った“児童労働のない”チョコレートです。

この連載では全4回に渡り、「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートが生まれた背景をお届けしています。ブランドコンセプトやパッケージの話で盛り上がった前回に引き続き、今回もACEの白木さんと佐藤さん、クラウン製菓の鶴田絹さん、チョコレートジャーナリストの市川歩美さんの座談会です。

今回はチョコレートづくりの重要な部分、「味」についての話を伺いました。「想いのこもった商品だからこそ、絶対においしいものにしたかった」と語る、チョコレート工場長で多数の企業やブランドの企画制作も手掛ける鶴田さん。アニダソチョコレートには、鶴田さんがいつかチョコレートに使いたいと思い温めてきた、日本のある調味料が使われています。4名が自信を持って「おいしい」とおすすめするチョコレートの味についてお伝えします。

白木朋子/特定非営利活動法人 ACE 副代表
大学在籍中に代表の岩附由香とともにACEを創業。開発援助コンサルティング会社での勤務を経て、2005年4月から2021年11月までACE事務局長を務め、2021年からは同副代表に就任。「しあわせへのチョコレートプロジェクト」を2009年の開始時よりリード。ガーナ・カカオ生産地での事業立案から、企業との連携、ガーナ政府の「児童労働フリーゾーン」の制度構築支援にも携わる。著書として「子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート」(2015年、合同出版)がある。

佐藤有希子/特定非営利活動法人 ACE ソーシャルビジネス推進事業 チーフ
企業(消費財メーカー)での海外営業やサプライチェーン管理の経験を経て、MBA取得後、開発経済学を学び2018年ACEに入職。​児童労働のない経済循環の実現を目指し、個別企業の活動を通じた取り組みの支援や啓発と、国内外の多様なステークホルダーとの連携を通じた取り組みの促進に従事。

鶴田絹/株式会社クラウン製菓 取締役 工場長
カカオ専門商社(株)立花商店にて勤務、産地別カカオの調達と普及及びフェアトレードチョコレートの開発と普及を担当。 現在はグループ会社であるチョコレート工場(株)クラウン製菓にて取締役兼工場長も務める。

市川歩美/チョコレートジャーナリスト
大学卒業後、放送局で長年ディレクターとして番組企画・制作に携わる。現在はチョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリストとして、カカオ生産地をはじめとした世界各国を取材し、情報を発信している。チョコレートの魅力を広く伝える、ショコラコーディネーターとしても活動。商品監修や開発のコンサルティングも行う。

ガーナと日本、それぞれの素材を合わせたら。

ーー前回は商品名やパッケージの裏話を聞かせていただきましたが、「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートは味にもこだわりがあると伺っています。

佐藤:目玉はなんといっても、“八丁味噌”が入っていることじゃないでしょうか。パッケージにもガーナと日本の国旗があるように、ふたつの国のつながりを表現できたらいいねと話していたら、たしか鶴田さんが急に「実は温めていたアイディアがあって……」と言い出して(笑)

白木:びっくりしたよね。八丁味噌のアイディアはいつから温めてたの?

鶴田:2年前ぐらいですかね。職業柄、いろいろな食材に出会うたびに「これはチョコに入れたらおいしいかな」と考えていて、「チョコに合う食材」のストックは結構あるんです。ただ、依頼されたチョコレートだとさまざまな制限もあるので使うことができなくて。八丁味噌も、いつか世に出したいなと温めていた食材です。

白木:ただのミルクチョコレートでは少し引きが弱いかも、と話していたタイミングでした。そこで、鶴田さんからの提案があって、みんなで「いいね!」と。

鶴田:正直、ちょっとどうかな……と思いながら、「八丁味噌を入れてみてもいいですか?」って聞いたんですよね。そしたら、歩美さんが「八丁味噌、大好き!カカオも味噌も醗酵食品だし、いいですね!」と言ってくれてホッとしました。

市川:実は八丁味噌の発祥地、愛知県岡崎市の近くで生まれたんです。小さい頃から八丁味噌を食べて育ったので、大好きで。

鶴田:そんなに一瞬で受け入れられると思ってなかったから、逆にびっくりしましたね(笑)。それで試作して、いくつか違う配合のものをみなさんにお送りしました。

いくつかの配合をためした八丁味噌入チョコレート

佐藤:オンラインでつないで、みんなで試食しながら意見交換しましたね。

白木:みんなものすごく集中してテイスティングしてた(笑)。八丁味噌の割合が1%でも違うと、味も変わりますね。

鶴田:割合が少なすぎると八丁味噌の味がしないし、多すぎるとしょっぱくなっちゃう。最初は3%ぐらい入れないとわからないよねと言ってたんですけど、最後、相談の末に1%になりました。八丁味噌のコクも感じつつ、1枚ペロッと食べきれるぐらいの軽さになったのでよかったと思います。

佐藤:まさに最近、1枚買ったらおいしくて追加で10枚買いました、という人がいました。

鶴田:それはすごい!

市川:今トレンドの「高カカオ成分のミルクチョコレート」なのも、推しポイントです。47%もカカオ成分が入っているので、カカオの風味がよりしっかり伝わります。チョコレートマニアの方にも評判がよく、子どもから大人までさまざまな方におすすめできるチョコレートになりました。

チョコレートマニアの手が伸びる味。

ーー私も食べさせていただきました。コクのある甘さなのに、スッと溶けたあとに次の1カケが食べたくなるようなさっぱり感もありました。

白木:本当に評判で、みんな「おいしい」って言ってくれるよね。実家に持って帰ったら、あっという間になくなっちゃったもん。

佐藤:「想像以上のおいしさでびっくりしました」とコメントが来たんですよ。

市川:それはすごい!私も会う人みんなに試食してもらっているんですけど、みなさん3かけらくらい食べるんですよ(笑)おいしいものを食べ慣れているメディアの方々も、本気でおいしいと言ってくれますね。

鶴田:作った甲斐がありましたねえ。工場で商品を試作しているときって、私たち作り手は毎日食べるんですよね。いつも味見は1かけらで終わるんですけど、「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートは社内の子もみんな黙々と食べ続けちゃう。作っている人がつい食べちゃうチョコレートは、やっぱりおいしいんだと思います。

市川:私も仕事柄、本当にたくさんのチョコレートを食べるんですけど、「食べたいな」と思って手に取るのは、最近「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートなんですよ。

鶴田:本当にそうなんです。この場だから言ってるんじゃなくて。 本当に山ほどチョコレートがあるなかで、手が伸びるのはこれなんですよ。

佐藤:すごいものが生まれちゃいましたね。

白木:嬉しいね。ありがとうございます。

マニアの手が伸びるチョコレート

心の底からオススメできるのが嬉しい。

市川:試食した方が「おいしい!」と言ってもう1かけら食べてくれるのは、本当に嬉しいんですよね。やっぱり「支援につながるチョコレート」だからこそ、本当においしいものじゃないといけない。支援になるという喜びだけでは、なかなか次につながらないと思うから。

白木:本当にそう思います。今回、ACEのスタッフも「全部に自信を持っておすすめできる」と喜んでいました。支援につながるだけでなく、自分たちが本当においしいと思えるものだからこそ、心から薦めることができるんだと思います。

鶴田:よくわかります。私自身、10年ほどフェアトレードチョコレートに携わるなかで、おいしさは追求したいと思い続けています。「フェアトレードだから買う」というのも大切な一方で、やっぱり本当においしいと思ってもらえるものを届けたい。支援につながるからこそ、絶対においしいフェアトレードチョコレートを作るんだ、という気持ちでやってきました。

支援だからこそ味にこだわる

市川:チョコレートが好きだからこそ、なおさらこだわりたいですよね。

鶴田:味が好きだと思ったら実はフェアトレードだった!と気付くようなものを作りたいな、とずっと思っていたんです。だから今回、デザインも味も自信を持って送り出せるアニダソチョコレートはそういうものになったんじゃないかと思って、すごく嬉しい。

市川:わかります。私はメディア業界にいる者として、いいものを作ったら伝えていかなきゃと思っているんです。このチョコレートは伝える価値の高いチョコレートです!私自身が感動しているので、自然と伝道師のようにみなさんに薦めてしまいます(笑)

「おいしい」の先に、背景まで伝わるチョコレートにしたい。

ーー本当においしいものを作りたい鶴田さん、伝えたい気持ちに溢れる市川さんと。それぞれのモチベーションが組み合わさったからこそ、今の「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートが生まれたんだなと思いました。

白木:本当にそう。そして、いただいたご寄付はACEがちゃんと責任を持って子どもたちのために使います。それは私たちの役割として、絶対的にお約束できる部分。

鶴田:その安心感が半端ないんですよね。ACEを通じて、ちゃんと届いていくんだってわかるから。

市川:正直、寄付ってどこか手応えがない気がしていて。支援したお金が誰のところへ行って、どんなふうに使われているのかわかりにくい部分もある。

佐藤:そうですね。

市川:私も11月にガーナ現地を訪れましたけど、ACEは徹底的に現場で子どもたちや家族と向き合っていることが伝わってきました。そういう信頼できる団体に「私はこのチョコレートを通して500円支援したんだ」とわかると、嬉しいと思うんですよね。

白木:もちろん現地のパートナー団体がいてこその活動ですけど、私たちも定期的にガーナへ行って直接お話を聞きます。12月に歩美さんとガーナへ行ったときもね、 カカオ農園で働くおばあちゃんや、一度は学校に行けるようになったけどまた児童労働に戻るリスクがある男の子の話を聞きました。彼らから話を聞くと、こういう人たちはまだまだいっぱいいるんだと思うんです。

市川:そうですよね。今、支援できているのは、ごく一部ですもんね。

佐藤:チョコレートが好きでも、きっとこの事実を知らない人はたくさんいると思います。そういう方々に、こういうことがあるんだと気づいてほしい。そして、行動がなにか変わるきっかけにしてもらえるといいな、と思います。

鶴田:私は身近な人たちにも、アニダソチョコレートで背景を知ってほしいという思いがあります。チョコレートを作る仕事をするなかで、どうしてもチョコレートの味や特徴の話が多くなります。もちろんそういう話も好きですが、本当は農家の方々やカカオ生産地のことも、もっと伝えたい。このチョコレートが、身近な人同士でそういう話をするきっかけになれば嬉しいです。

それぞれのこだわりを詰め込んだチョコレート

これまで、アニダソチョコレートが作られた背景のストーリーをお伝えしてきました。次回、連載の最後では白木さんと市川さんの対談です。アニダソチョコレートを作り終えたあと、おふたりはガーナにあるACEの活動地域へと飛びました。その旅で、それぞれが感じたことを伺っていきます。

「ANIDASOƆ-アニダソ」チョコレートの詳細、販売店情報はこちらからご覧ください。

【The journey of ANIDASOƆ】
01:25年間の「希望」をつなぐチョコレート
02:“届けたい相手”を見続けたブランドづくり
03:「支援だからこそ」こだわりたかった味への想い
04:世界を変える選択が、あなたにもあると知ってほしい

(取材・執筆:ウィルソン麻菜)